
時を忘れ、いつまでもいたくなってしまう至福空間
まるで我が家のように、大切な人をお招きしてしまう空間
シェアスペースの概念が変わるほど、不思議な愛情を抱いてしまう…
それが、上越地域の皆さんに愛されるシェアスペース「山のホムサ」です。

その不思議な愛情の理由を自問しました。
その結果、山のホムサを自ら創り、運営するご家族のお人柄とセンスに行きつきました。
8年間空き家になっていた山中の古民家が、いよいよ処分するということになり、ご家族で、その再生に自ら取り組むことにしたそうです。
解体から、デザイン、改築まで、家族三人(長女さんとご両親)で行いました。
(山のホムサの古民家改築裏話についてはこちらhttps://inaka-pipe.net/20221227/)
長く放置された状態にあった空き家を、自らの手で創造性あふれる豊かな空間に生まれ変わらせた、三人それぞれのセンスには、何度訪れても、毎回感動を禁じ得ません。
山のホムサにお邪魔し、お三方のお人柄に触れるたびに心洗われ、人生の素晴らしさを感じながら、温かい気持ちで帰路につくことができます。
ご家族が再生した古民家の創造的空間が醸し出す「気」が、心を豊かに満たしてくれ、明日への活力を与えてくれる、山のホムサはそんなパワースポットです。
ここでは、ごく一部ですが、その至福の空間をご紹介させていただきます。
上越妙高駅から車で約30分、牧区高尾の自然豊かな環境の中に、山のホムサはあります。

優しい手書き文字が、ホムサへと導いてくれます。

ホムサの特徴の一つは、他の古民家再生建築には見られない、鮮やかで温かい色彩表現です。

古民家特有の見事な梁組みを見上げる空間にカラフルなポンポン(毛糸珠)が吊るされています。

端材を6つジグザグに釣り下げた創作灯の明かりに、吊るされた無数の色の珠が、美しく浮かびあがり華やいでいます。両端の端材は斜めにカットされ、光が照らす角度が変えられています。

ここでもポンポンの無数の色が艶やかです。
右に2つ並ぶ古農具「藁打ち」が空間に暖かさを醸し出しています。
入口の蔵扉の上部を飾るポンポンも艶やかです。

色とりどりの着物や帯等を加工した布生地が、あらわしにされた茅葺屋根の裏の梁や柱に巻かれ、シックな空間に柔らかな彩りを加えています。

色鮮やかにペイントされた天井はまさに現代アート。

絶妙な配色とデザインのパターンに、魅了されてしまいます。

洗面台上の天井アートも見逃せません。

下は、中二階の天井です。
そのカラーリングは、ブルーノ・タウトの世界遺産建築を彷彿させる配色です。

美しい配色の天井を照らす灯は、かんじき(雪の上を歩くための民具)を活用したものです。
上越地域の古民家に残る民具を電笠として活用した、ものを大切にする心とセンスに唸らされます。
下の写真で、茅葺の吹き抜け空間を照らすのは、この古民家に残っていたソリ(荷物牽引用)を加工した灯です。
ソリに吊るされた植物柄の装飾が、重厚なソリを、ホムサの温かな空間に溶け込ませています。

W.モリスを思い起させる植物柄の装飾は、この古民家の各所に吊るされ、空間を柔らかく、温かくしています。
これも手作りによるもので、吊られた植物の立体感にモリス作品とは異なる生命感、やさしさを感じます。

「吊るす」装飾は、色とりどりの珠や、植物だけではありません。
上越古民家特有の立派な梁に吊るされたハンモックも、古民家空間を彩る装飾と化しています。

カラフルなポンポンとハンモックたちが、吊られながら艶やかな空間に調和しています。

「あっぱれ!」と思わされたのが、使わなくなった古箪笥の引き出しを、壁に逆さに吊るした棚です。

壁に吊るされた棚の取っ手から、更に下へ吊るされたものが装飾化しています。

吊るされた植物の葉や枝のみならず、木の自然な丸みを活かした装飾が随所で、古民家の柱や梁の固さ、色の暗さを和らげています。

上の写真左にある曲がった木は、まるで床から生えているようです。
この木は、屋根裏に積まれていた材を立てたものです。
中央にある丸太の丸い面を貼り付けた装飾は、古民家の空間を自然で柔らかく温かいものにしています。

自然木の表面をそのまま貼り付けた装飾は、洗面台左の壁やトイレ、玄関などでも、空間を柔らかく優しくしています。


木の活用は他にもさまざまです。
茅葺の吹き抜け下では、無数の楮の枝を縦にランダムに組んだ装飾が空間になじんでいます。古民家ヲタクとしては、野性的な筬欄間と呼びたくなります。
この楮の木は、ご近所の楮畑で栽培されているものです。小国町の和紙工房へ出荷するために皮がはがされたものです。

あちらこちらが多種多様な装飾に溢れていながら、これほど落ち着く建築空間に出会ったことがありません。
中二階への階段の手すり(下の写真左)は、この古民家に自生していた柳の木です。

蔵の扉の取っ手は、山椒の木です。
すりこぎ棒に使われる素材で、グリップがしっかりしており、重い蔵扉を動かすのにぴったりです。

自然の温かさという点で実に興味深いのは、下の胡桃の額縁です。

古民家をよく知る人であれば、下の写真を見ると、思わず驚くでしょう。
なんと外壁の簓子下見(ささらこしたみ)張りの押縁(おしぶち)が額縁として組まれています。
「押縁」の「額縁」です。

ホムサでは、本棚も魅力的な装飾です。

読書のためにホムサに来られるお客様や、図書館のように本を借りていかれるお客様もいらっしゃるそうです。


居心地良い空間は、大きな額縁のような横長のはめころし窓を介して、豊かな自然とつながっています。

窓からは、遠く上越の市街地までものぞむことができます。

至福の空間は、各所で豊かな自然とつながり、そこに佇むだけで心豊かにさせてくれます。


セルフサービスのキッチンには、珍しいたくさんの種類の飲み物が揃えられていて、これを見るだけでワクワクします。(私のお気に入りはシナモンティー。)
全て自然素材でオーナーご自身が手作りしたクッキー類は、おいしく癖になります。

次回も、どんなホムサに会えるか、楽しみです♪