
古民家再生に実際に役立つ本をご紹介
目次
- 古民家再生理念 / 考え方の礎となる書籍
- 世界で一番住みたい家 (赤池学 他)
- HOW BUILDINGS LEARN (Stewart Brand)
- 古民家再生の技法、造作、デザイン等の参考になる書籍
- 自然の家 (フランク・ロイドライト)
- 自然な建築 (隈研吾)
- 陰翳礼讃 (谷崎潤一郎)
- カールベンクス よみがえる古民家
- 和の建築図案集 (建築資料研究社)
今後、ご紹介する書籍を増やし、記事を充実させていきます。ご期待ください。
古民家再生理念 / 考え方の礎となる書籍
世界で一番住みたい家 (赤池学 他)

承継樓の再生/改築理念、考え方の礎となったたいせつ古民家のバイブルです。
日本の住宅の間違ったあり方を根本から問い、正しいあり方を提起する書です。
1998年に書かれたこの書籍は、四半世紀を経た今も、これから日本で住宅を建てたいという人にとっての必読書と言えます。
序章「家づくりについて間違って信じていたこと」は、著者赤池氏が建てたご自宅とご家族の死、病を踏まえた悲痛な振り返りと、阪神大震災から学ぶべき教訓から始まります。
そして以下の各章に沿って、家づくりの何が間違っていて、何が正しい姿なのか、それを対比する形で、調査とデータに基づく科学的なエビデンスをもとに、専門家以外にもわかり易く解説しています。
ちなみに、この書籍の題材となっている株式会社木の城たいせつは、2008年に倒産し、その後大阪の株式会社創建が事業を引き継ぎ、経営しています。同社(創建)は、被災地に神社を建設し寄付しています。頭が下がります。
HOW BUILDINGS LEARN (Stewart Brand)

日本のみならず、世界の建築物(住宅のみではない)の間違った在り方を根本から問う書です。たいせつ古民家の理念を支える第二のバイブルです。日本語版がないのが残念です。
1994年に書かれたこの書籍は、「世界で一番住みたい家」同様に、30年を経た今も、これから日本で建築物を建てたいという人にとっての必読書と言えます。
著者Stewart Brandは、スティーブ・ジョブズが愛し、「紙でできたグーグル」と称賛したホールアースカタログの制作者です。
スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学の卒業式での有名なスピーチの最後に引用された”stay hungry, stay foolish”はホールアースカタログの最終号からの引用です。
スティーブ・ジョブズと同様に、物事の本質を鋭く捉える洞察力を持つStewart Brandが、建築における本質的問題を突きつけたのがこの書ではないでしょうか。
この書籍の副題は”What happens after they’re built”です。直訳すれば、「建築物が建てられたあとに起きること」となるでしょう。建築物に欠落しがちな時間という概念の重要さを説いています。
例えば、風雨に長くさらされれば自然に外壁が傷む、居住者の家族構成や生活スタイルや利用者の利用法が変われば建物の内側で求められることも変わる。
本来そのような変化を考慮に入れて、長期的な視点に立って建築物はつくられなければならないのに、建築家が目先の自己満足で設計してしまう。そんな建築における短期志向の本質的問題を鋭く突いています。
古民家再生の技法、造作、デザイン等の参考となる書籍
自然の家 (フランク・ロイドライト)

たいせつ古民家再生モデルハウスの承継樓には、新幹線のグリーン車で使用されているカーボンファイバー式の床暖房が採り入れられています。
その床暖房導入のきっかけとなったのが、この書籍に登場する「重力暖房」です。
床暖房がフランク・ロイドライトによって、「重力暖房」として、日本で発明された偶然のきっかけから、新発明の「重力暖房」が、アメリカで全く受け入れられなかったため、日本の帝国ホテルで初めて導入された経緯等が、詳しく書かれています。
床暖房に関する見方が変わります。
自然な建築 (隈研吾)

承継樓の「令和の辻燈籠」に、敢えて和紙を活用するための超常識的ヒントと師匠を、隈研吾氏の著書「自然な建築」から得ました。
承継樓の辻燈籠の和紙活用の師匠は、門出和紙の小林康生氏です。
承継樓の風雨にさらされる玄関に設置する辻燈籠の灯を映す面に、是非とも和紙を使いたいと考えたときに、改めて「自然の建築」にあった強固な和紙の話を思い出し、読み直しました。
そして、隈氏が「和紙だけで内と外を仕切った建築」の実現に共に取り組んだパートナーが、隣の市にありながら、これまで車で通り過ぎていた和紙工房の主、小林氏であることを初めて認識し、早速駆け込みました。
令和の辻燈籠の東西北3面の和紙に貼った3枚のうち、1枚は、門出和紙工房の手漉き和紙体験で小林氏の直接指導のもと自ら漉いた作品です。
そしてその自ら漉いた和紙に、風雨に耐えられるように、小林氏の教えに従って自分でこんにゃくを塗った完全自作です。
もう一枚は、小林氏の工房の多くの和紙製品のなかで、強度の高い和紙を購入し、それに自らこんにゃくを塗ったものです。
そしてもう一枚は、門出和紙の一流の職人さんにお願いして、九曜紋をオーダーメイドで一枚ずつ丁寧に型染めしていただいた貴重なものです。
隈氏のこの書籍なくして、このような貴重なご縁と贅沢な経験あり得ませんでした。
古民家再生で手漉き和紙を使いたい、とりわけ風雨にさらされる場所に和紙を使いたいと考えている人には、是非読んでいただきたい書です。
陰翳礼讃 (谷崎潤一郎)

承継樓では、古民家ならではの優美な造作と、LEDや太陽光発電などのサステナブルな光源を新結合することで、令和の「シン・陰翳礼讃」を創造、提起しました。
「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」は、谷崎潤一郎が、雑誌「経済往来」で1933年12月号から連載した随想評論です。
陰翳礼讃とは文字どおり、陰翳を敬い褒め讃えることです。
そして、この陰翳とは、光の直接当たらない暗がりのことですが、真っ暗な闇ではなく、光の存在をわずかに感じるぼんやりとした薄暗がりの状態を意味します。
日本の伝統的な生活様式に、電灯という西洋文明の利器が侵入してきた近代化によって生ずる、美的な不調和を谷崎は嘆きます。
蝋燭からランプ、ガス灯、電灯へと、絶えず明るさを追求し、陰を消そうとしてきた西洋文明に対して、日本の伝統文化には暗がりの中に美を求める美意識があるとしています。
電灯がなかった時代の日本の美の感覚、生活と自然とが一体化し、真に風雅の神髄を知っていた日本人の芸術的な感性に着目し、衣食住から芸能等に至るまで様々な角度から論じています。
カールベンクス よみがえる古民家

カールさんは、承継樓改築への道を、切り開いてくださった恩人です。
カールさんは、2021年に2度、設計士さんとお二人で、承継樓を訪れて下さいました。
最初に承継樓の価値を高く評価してくださり、承継樓の改築に向けたアクションを取ってくださった人こそが、カールさんでした。
カールさんより前に、古民家再生実績を誇る財閥系の一流会社さんや、大手ハウスメーカーの古民家再生の熟練者等の皆さまが、承継樓を視察に訪れて下さっていました。
非常に興味深いことに、そんな日本の一流企業の古民家再生のプロ、熟練者の皆さまと、カールさんの行動、視察法、評価は全く異なり、真反対でした。
例えば、日本の一流企業の古民家再生のプロ、熟練の皆さまが、誰一人として足を踏み入れることがなかった茅葺の屋根裏に、カールさんは、軽快にはしごを上って、天井裏の梁等の視察・評価をしてくださいました。
一方で、日本の一流企業の方々は、誰一人として茅葺の屋根裏から天井裏の梁等の承継樓の構造を視ようともされませんでした。
表面だけを視察され、承継樓の再生は、不可能(あるいは関心がない、関わりたくない?)というご姿勢、ご意見でした。財閥系の会社さんからは白アリ退治をご提案をいただきました。大手ハウスメーカーさんは、即無理というご判断でした。
また、カールさんは、建物の構造を視察・調査されただけはありません。古民家に遺る歴史的な古民具等にまで、カールさんの視察の目はしっかり行き届いてました。例えば、一階の最も奥の普段は人が入らない小部屋の押し入れに入っていた金庫箪笥の価値と、特殊な鍵の仕組みを教えて下さったもカールさんでした。
カールさんには承継樓まで二度もお越しいただき、古民家としての価値を初めて高く評価し、現状図面作成のために設計士さんと実測までしていただき、改築への動きを前に進めていただきましたこと、そして素敵な夢を見させていただきましたこと、感謝しかありません。
東京等遠方から承継樓を訪れるお客様を、時間さえ許せば、必ずと言ってよいほど、カールさんのカフェ「渋い」へお連れします。そのたびに、カールさんと秘書の大出さん、そしてカフェのスタッフの皆さんには大変お世話になっておりますこと、この場をお借りしてお礼申し上げます。
和の建築図案集 (建築資料研究社)

とても実用的な和の建築図案集です
欄間、障子、火灯窓等のデザインがとても豊富で、かつ見やすく掲載されており、承継樓改築において、とても参考になりました。
他にも、さまざまな和の建築技法やデザインが紹介されており、古民家再生を学ぶ人、古民家再生に取り組む人には是非おすすめです。